悪魔の運動会
【斉木真一】
僕は不登校だ。
中学2年の夏から、一度も学校には行っていない。
3年生に進級した時も、担任の新垣が何度も何度もやってきたけど、僕が部屋から出ることはなかった。
学級委員の安藤直人に副学級委員の相原友子は、飽きずに何度も僕の家を訪れた。
なんとか僕を登校させようと躍起になっていたけれど、僕自身、なぜ不登校になったのか分からない。
寺脇リカのように、イジメられたわけでもない。
確かに吃音が激しいため、自分から話しかけることもない。友達という友達も居なかった。
だからかもしれない。
友達が居ないなら、無理して行く必要はないんじゃないか?
諦めにも似た感情が、ある時、爆発したんだ。
明日こそは、明日がもし晴れたら、もし雨なら学校に行こう。
そう言い聞かせてみても、朝になるとお腹が痛くなる。
心と体がバラバラになったような、そんな感覚だ。
「斉木、ほんとにいいのか?」
間宮くんが、僕に尋ねる。
「うん、大丈夫」
しっかりと頷いた。
不思議なことに、間宮くんの前だと吃(ども)らない。
家が近くだからと、いつもプリントを持ってきてくれた。いつも下手くそな4コマ漫画が描いてあって、それを読むのが楽しみだった。
数日前のプリントは【職場体験】のお知らせだった。
いつもの漫画はなく、癖のある字でこう書かれていた。
「一緒に思い出、作らないか?」