悪魔の運動会


【相原友子】


平均台に足をかけても、まだ誰も壁を乗り越えてはこない。


この長い平均台さえ越えれば、あとはゴールまで一直線に駆けるだけ。


いける‼︎


幅20㎝ほどの角ばった台に体を乗り上げる。一歩、進んだところで滑ってしまい、地面に尻もちをついてしまった。


私は平均台に顔を近づけると、滑(ぬめ)っているのが分かった。なにかが塗ってあるんだ。


「平均台から落ちたら、一からやり直して下さい」


声に従い、再び足をかけるが、氷の上を滑っているようで、どうしても落ちてしまう。


体を打ちつけるのを怖がるから余計、体勢が不安定になるからだ。


ここは逆に、滑ったほうがいい。


足底を台につけたまま、少しずつ少しずつ進む。足を浮かしてしまうと、バランスを崩すからだ。難点は時間がかかること。


ようやく半分を過ぎた頃、白組の歓声が聞こえた。


樋口美咲が壁を乗り越えて走ってくる‼︎


でも大丈夫だ。一度でクリアできるわけがない。ここは焦らず慎重に、あと3分の1を渡りきるんだ。


美咲が台に足を掛けた。


そのままの勢いで足をかけて渡れば、派手に転倒するだろう。


だが、美咲は足を下ろした。


少し思案しているようだったが、砂を手ですくうと平均台に塗りつけていく。


私がやっと足を下ろしかけた時、美咲はもう半分まで進んでいた。


リードはある。


大丈夫だ。









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