悪魔の運動会
「__大将?」
私は聞き返した。
競技が始まる前、安藤くんが私にそう指示をしたからだ。
「そうだ。大将は久米でいこう。俺が裕貴たちを食い止める。相原ももし1着でゴールできそうならそのまま突っ走る。でもダメだと判断したら、最後は大将である久米に託すんだ」
「分かったわ。あくまで大将の久米さんをアシストする、囮に徹するというわけね」
自らに課せられた役割を、自らに叩き込む。
そして平均台から下り、走っている最中に私は後ろを振り返った。
間近に迫った美咲。
でも私は、それだけを見たわけじゃない。
壁を乗り越えた茜が、駆けてくるのも見えたんだ。
自分じゃ勝てないと悟った瞬間、私は美咲の腰に飛びついた。
「久米さん‼︎行って‼︎」
「えっ⁉︎」
腕の中でもがいていた美咲が、ハッと振り返る。
颯爽と私たちを追い抜いていく、久米茜。
私たちの大将だ。
そして、茜はゴールテープを切った。
「紅組の勝利」
それは、私たちのチーム力がもたらした勝利だった。