悪魔の運動会


【寺脇リカ】


わざと咳をしてやった。


足元がグラついた相原友子が、倒れそうになる。


「ちょっと寺脇さん‼︎動かないでよ‼︎」


「動いてないわよ‼︎」


言い返してやった。


これまた可笑しい。


相原友子の命を、私が握っている感覚。私が少しでも動けば、悲鳴を上げて動揺する。その無様さが可笑しかった。


でも、慎重にやらなくてはならない。


そう思うと、勝負の鍵を握ってるいる上段より、その下のほうが目立たなくていい。下手に倒れて負けでもしたら、私が失格になる恐れがある。


ここは機会をうかがったほうがいい。


絶好のチャンスを掴むまで、息を潜めよう。


そして、相原友子を失格者にしてやる。


にんまりと笑ったものの、ただ時間だけが無意味に流れていく。


相手チームのピラミッドは揺れもせず、山寺正人が銅像のように立っているし、なんとかバランスを保った紅組の頂上も、突風でも吹かない限りは倒れないだろう。


重みに耐え忍ぶ、地味な時間。


でも__と、私は思う。


急に早くなる縄跳び、負ければ電気が流れる綱、玉入れは重たい玉が紛れていた。障害物競走にいたっては、パンに毒が仕込まれていたではないか。


このまま済むわけがない。


きっと何かが起こる。


何かが__。









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