悪魔の運動会
【山寺正人】
さらに静かに時だけが流れていく。
全く動くことない、2つの人間ピラミッド。
その頂きに居る僕は、微かな揺れを感じていた。
「おい‼︎いい加減にしろや‼︎」
裕貴が大きな声を上げるたび、ピラミッドがグラつく。
これはもしかしたら__どちらが辛抱強いかの我慢比べだろうか?それなら裕貴が土台の、うちのチームが不利じゃないか?
「ちょっと、動かないでくれよ‼︎」
「うっせーな‼︎ちんたらやってられっかよ‼︎」
そう言って膝を立てかけたのか、山が大きく左に傾く。
僕は咄嗟に腰を落とし、真ん中の伊藤明日香の背に手をついた。
地面に落ちさえしなければいいだけだ。
再び体勢を立て直したのは、異変を察して裕貴が元に戻ったから。2つの山の中央に、猿がやってきた。
満面の笑みの着ぐるみは、なにかを両手で持っている。
鳥かごだろうか?
布が掛かっていて見えない、不穏なもの__。
まさか、爆弾か⁉︎
全員が息を飲んで、猿が布を取り去るのを見ていた。
「何か、聞こえない?」
誰かが言った。
そう、何かが聞こえる。
なにかが、擦れる音が聞こえてくる。
そしてゆっくり、布が捲られた__。