悪魔の運動会


【小林健】


い、息ができない⁉︎


亀のように体を丸め、頭を抱えた。


それでも、体の毛という毛が逆立っている。


猿が意味ありげに現れた時から、ドクンと心臓が高鳴った。


なにを見たわけではない。


布に覆われて隠されていたのに、体が拒絶反応を起こした。


__あの時のように。


汗が吹き出し、喉がからからに乾く。血管が詰まったような感覚がやがて、体全体に広がっていき、手足が痺れていく。それなのに、羽音だけがはっきりと聞こえてくる。


蜂の羽音。


あれは小学4年生だった。


無鉄砲に蜂の巣を叩き落とし、ブスリと針に刺されたんだ。


アナフラキシィーショック。


一命は取り留めたが、もしまた次、刺されるようなことがあったら間違いなく___死ぬ。


今にも逃げ出したいが、ピラミッドの1番下にいて身動きが取れない。


それに、いま俺が抜けると山が崩れて敗けてしまう。


耳を塞いで、亀となるしかない。


「おい、なに震えてんだよ‼︎」


隣の野々村哲也が怒鳴った。


みんな微動だにせず耐えているのに、震えが止まらない。


羽音も聞こえてくる。


止めよとすればするほど、激しく震えて、今やその振動がピラミッド全体に広がっていた。


だ、大丈夫だ。


さ、さ、刺されるなんてこと__な、い?










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