悪魔の運動会


「うあああぁぁー‼︎」


俺は絶叫した。


背に伸し掛かる重みを跳ね除けて立ち上がる。


その結果、白組の人間ピラミッドは跡形もなく崩れた。残ったのは、折り重なった人間の残骸だけ。


纏わりついてくる蜂を追い払う。


我を失ってはいたが、立ち上がる瞬間、俺は見た。


向かいのピラミッドから、頂にいた相原友子がフワリと転げ落ちていくのを。


相原が地面に転落したのと、俺が立ち上がったのは、ほぼ同時。


だから負けてはいない。


俺たちの勝ちだ。


蜂の猛攻に耐え抜いた、俺の勝ちなんだ‼︎


「紅組の勝利」


だからそんなアナウンスにも、しばらく気づかなかった。


紅組が喜び合っているのを見てようやく、負けたのか?


でも先に、相原が落ちたはず。


それなのに負けたっていうことは?


先に__正人が?


我らが白組には、輪ができていた。


儚げな輪が。


フラフラと引き寄せられるように覗き込むと、そこには山寺正人が倒れていた。


顔を紫色に変色させた正人は、蜂に刺されたんだ。


俺が以前、刺されたように。


小刻みに体を痙攣させ、すぐに手当てをしないと助からない。


それなのに、気づいたら俺は叫んでいた。


「は、早く運ぼう‼︎早く投票しよう‼︎」





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