悪魔の運動会
「な、なんでだよ‼︎なんで__?」
再び明かりが灯った画面には、自分たちの名前が並んでいた。
だが、さっきまでとは違う。
【山寺正人】の名前がそこには無かったからだ。
俺が振り向くと、猿とウサギが、全く動かなくなった山寺を運んでいく。
それを全員が、ただ呆然と見送った。
間に合わなかった?
「残り時間、30秒」
アナウンスに我に返る。
みんなが、慌てて画面にタッチしていた。
「おい、た、頼む!俺に入れないでくれよ‼︎」
周りに訴えかけるが、誰も目を合わそうとしない。それは即ち[小林健]に投票したからだ。
もし、もし俺が紅組なら、きっと野球部の仲間や、マネージャーの茜が守ってくれた。
俺だけ1人、ハブれたばっかりに__。
「それでは開票いたします」
「小林健」
「小林健」
「無記名投票、木崎涼子」
「小林健」
「小林健」
「小林健」
「戸田裕貴」
「てめぇ‼︎なに俺に入れちゃってくれてんだよ‼︎ま、今回ばかりは許してやるよ。じゃあな」
戸田裕貴が優しく微笑んだ。
なによりの餞別だとでもいうように。
教室の入り口から、猿とウサギが入ってくる。
俺も運ばれる__蜂に刺されて死んだ、山寺正人のように。
俺が1人、白組だったばっかりに。
「あああぁぁぁぁーっ‼︎」