悪魔の運動会
【西川浩二】
健が、落ちた__。
ほぼ全員が小林健に投票した。
そう、確か小学生の時に蜂に刺され、それからというもの、蝶や蝿でさえ怖がるくらいだ。
そのせいでピラミッドが崩れ、でも既に刺されていた山寺正人。だから健たちは山寺に投票するつもりだったんだろう。それがやり直しという。次に画面がもどると、そこに山寺正人の名前はなかった__。
「そんな、健が?」
久米茜の目に、涙が溢れそうになる。
俺たちのマネージャー。俺と、周平と健のマドンナ。
「ただ失格になっただけだ」
周平がそう言うが、それが気休めだということは分かっていた。
それでも、茜を励ます必要がある。
だって俺たちは、俺たち野球部は全員で茜を守ると誓ったんだから。
「あああぁぁぁーっ‼︎」
叫び声が聞こえた。
机が派手に倒れる音も、2つ離れた教室から聞こえてくる。
きっと健だ。
なんで健だけ、分かれてしまったんだ?もし紅組だったなら、俺たちで助け合えたのに。
「ねぇ、なんで?なんで健が?」
茜も同じことを考えていたのだろう。
俺も周平も、答えることができない。どうしてやることも、俺たちには__。
「た、助けてくれ‼︎」