悪魔の運動会
*シャッフル
【安藤直人】
誰も何も喋らなかった。
息をすることさえ苦しいくらいの重い空気。
フォークダンスを踊る前と踊った後とでは、紅組の教室の温度差は、夏と冬くらいに違っている。
ひょっとしたら、失格者はみんな家に帰っているかも?
そんな一抹の希望も、潰えてしまった。
ダンスで失格者となった久米茜を連れ、校舎に逃げ込んだ西川浩二だったが、2人は追い詰められて屋上から飛び降りた。
どんな仕掛けもない。
そのことをまざまざと思い知らされた俺たちは、一歩も動くことができず__。
「それでは後半戦まで、しばしお待ち下さい」
そんなアナウンスが、虚しく流れていくだけ。
泥のように重い足取りで、教室に戻った途端、笠井周平が大声を上げた。
「俺のせいだ、俺が__俺が‼︎」
椅子を持ち上げ、机に叩きつける。
唯一、生き残った野球部の周平。いつも4人でつるんでいた。今回のことも、周平なりに良かれと思ってやったに違いない。
「お前のせいじゃない‼︎」
旬が後ろから羽交い締めにして、落ち着かせようとするが、行き場のない悲しみは収まりそうにない。
相原も泣いている。
寺脇リカも、さすがに俯いていた。
俺たちは今にも、悲しみに押し潰されそうだった。