悪魔の運動会
【相原友子】
私はこの唐揚げの味を、忘れることはないだろう。
でもこれは、安藤くんの思いだ。
だから私は受け取った。
立ち止まっている暇はない。前を向かなくちゃ。
「寺脇さんもどう?」
弁当ごと差し出すと、露骨に顔をしかめる。
「こんな時によく食べられるわね?」
「こんな時だからこそ食べるのよ」
梅干しは酸っぱくて、サラダのドレッシングは甘い。
こんな時でも、味は分かるんだ。
「そうだな、相原の言う通りだ。周平、食おうぜ」
間宮くんに肩を組まれた笠井くんも、やっと落ち着きを取り戻した。
2人が弁当を食べ出す。
「意外にいけんじゃね?なぁ?」
「__そうだな」
猛烈な勢いで食べていく男子に、ブスっと明後日の方を向いていた寺脇さんも感化されたのか、弁当を盗むようにひっ摑んだ。
どこかその様子が可笑しくて、私たちは顔を見合わせて笑った。
まだ笑える。
これなら大丈夫。
安藤くんも間宮くんもいる。
私たちは大丈夫だ。
なにも心配することはない。
そんな私の希望は、またしても打ち砕かれることとなる。
それはもう、木っ端微塵に__。