悪魔の運動会
大丈夫、私は酔ってもいない。
常に三半規管を鍛えていた。だから志願したのもある。
奇妙な運動会に巻き込まれ、でも勝負の世界で生きてきた私にとっては、残酷でもなんでもなかった。
勝つ者がいれば、必ず負ける者がいる。
負ける者の上に立つ者こそ、本物の勝者となる。
両親の教えだ。
それでも私が自ら玉に入ることを名乗り出たのは__。
「本当はバランス感覚も誰よりいい。だから、人間ピラミッドの時、1番上に立とうと思った。でも__できなかった。責任が重くて。もし私があの時、てっぺんに居たら、蜂には刺されてなかったかもしれない」
そう、ずっと悔やんでいた。
私なら落ちなくても済んだかもしれない。
だから、だからもしまた同じような場面に遭遇したら、私は手を挙げる。
もう後悔はしたくない。
過去を振り返ってばかりの自分と、意気地なしの自分にはさよならする。
そして__絶対に勝つ‼︎
「ちょっとリードしてるわ‼︎」
玉を開けて外に引っ張り出してくれた立花薫が、大きな声で言った。
振り返ると、白組はやっと到着したばかり。
「ありがとう‼︎」
ここまで熱く、誰かにお礼を言ったことがあっただろうか?
体操を辞めてから、何かに打ち込んだことがあっただろうか?
私の中の勝負魂がむくむくと蘇ってくる。
「任せたわよ‼︎」
薫の激励に頷き、私は駆け出した。
全くよろけることもなく、ただ真っ直ぐに__。