悪魔の運動会
*投票第6回目
【野々村哲也】
裕貴は動かない。
俺と間宮で肩を担いで運んだ時も、荒い息遣いが聞こえるだけで、意識があるのかさえ分からなかった。
競技前は、誰が相手であれ潰してやると息巻いていたのに、まさか、伊藤明日香に返り討ちにあうとは。
小柄な女にめった打ちされたのは、体だけじゃない。
男としてのプライドも打ち砕かれた。
だから急いだほうがいい。
鬼が目を覚まして、暴れないうちに__。
「それでは投票を開始します」
とは言っても、裕貴はグッタリと机に覆いかぶさっているだけだ。
60秒という時間内に、裕貴が目を開けることはなかった。
開票が始まる。
「戸田裕貴」
「戸田裕貴」
「無記名投票、木崎涼子」
木崎の名前が呼ばれると、少し空気が変わった。
どう考えても、ここは裕貴に入れるのが普通だろう。
あの相原友子でさえ、殺さないで!と訴えた。生かしておいてほしいと、みんなの心を代弁してくれた。
そうすれば、誰も落ちる必要がない。
「戸田裕貴」
「戸田裕貴」
「無記名投票、戸田裕貴」
最後は自分にまで1票を投じた__。
早くしてくれと俺は願う。裕貴が目を覚まさないうちに、教室から連れ出してくれ。
早く。
早く早く早く‼︎
「戸田裕貴、失格」