悪魔の運動会
「全員、ぶっ殺してやる‼︎」
そう言って机をなぎ倒し、椅子を蹴り上げる。
頭から血を流し、真っ赤に目を充血させ、怒声を上げて暴れまくるその形相は、まさに鬼。
迂闊に近づけば巻き込まれる。
騒ぎを聞きつけた動物たちも一瞬、制止するのをためらうほどだ。
「お、落ち着けって‼︎」
ダチのよしみで声を掛けると、ギロッ‼︎と睨まれた。
や、やばい‼︎
高々と持ち上げた椅子が、真っ直ぐ向かってくる。
俺は咄嗟に身をかわしたが、その椅子は後ろの女子めがけて飛んでいった。
「キャッ‼︎」
悲鳴とともに倒れたのは、樋口美咲だ。すぐに相原と木崎か助け起すが、腕を痛めたらしい。
肘を押さえて立ち上がった樋口だったが、その怒り顔はすぐに解消されることとなった。
振り返ると__裕貴が居ない?
そこにいたはずの裕貴に取って代わったのは、うさぎだった。
床に倒れている鬼を、可愛らしいうさぎがフルボッコにしている。
何度も何度も腹を蹴り上げ、踏みつけ、すでに裕貴は動かない。
それでも足を上げるうさぎを、周りの動物たちが止めるという、妙なシチュエーション。なにかと問題児の裕貴に、我慢ならなかったんだろう。
ほぼ死体のように運ばれていく戸田裕貴を、俺たちは黙って見送るしかなかった。