悪魔の運動会
【安藤直人】
「それでは校庭にお集まり下さい。続いての競技を始めます。第7競技はムカデ競争です」
俺たちがグラウンドに出ると、うさぎと犬が端っこで手招きをしている。
どうやらそこがスタート地点らしい。
板切れに輪っかが5つ。
そこに足を引っ掛けてムカデのように速さを競う、ムカデ競争だ。
「どの順番で並ぶか決めよう」
俺がみんなを促すが、全員が心ここにあらずで明後日の方を見ている。
目をやると、そこにうさぎが居た。
真っ白だったはずの着ぐるみが、ところどころ赤く染まっている。
その理由を、俺たちは知っている。
それを言うなら、伊藤明日香のジャージも土の汚れなのか分からない沁みがついていた。
なにが明日香をそうさせたのかは分からないが、これからはもっと熾烈な戦いが待っているかもしれない。
このまま、このまま最後の1人になるまで競技を続けるのか?
それなら紅組はどうなる?またシャッフル?
もう時刻は15時を回っている。この運動会にもいつか終わりが来るだろう。本当ならもう1人の失格者も出したくないが、今は1人でも多く残っていたい。
俺たちが勝つということは、白組の誰かが居なくなるということ。
もう犠牲者は出したくない気持ちと、これ以上、組として負けるわけにはいかないジレンマの板挟み__。