悪魔の運動会
【立花薫】
「ちょっと安藤‼︎止まって!」
ムカデの真ん中から、私は声を張り上げた。
ちょうどその時、白組がドミノ倒しのように転倒したのが見えた。
それだけじゃない。
その先に、赤くて太いラインが引かれているのも見えたんだ。
私たちは転倒することなく、手前で止まる。
「これは__?」
先頭の安藤が振り返る。
誰もが、手の痺れを思い出していることだろう。線を変えれば、電流が流れる。それも今度は一瞬じゃない
。
ムカデが感電するくらいの時間。
ラインを越えた後、果たして走ることができるのか?
でも__。
「安藤、行くしかないわ」
紅組が全員、絶句する。
「だって、スピードでは負けてる。向こうも躊躇してるし、ここで差をつけるしかない」
「__そうだな。みんな、いいか?」
安藤の確認に、寺脇リカ以外が頷いた。
リカなんてどうでもいい。全員で右足を浮かせ、私たちはラインに踏み込んだ__。
「__え?」
なんともない。
電気どころか、ちゃんと舗装されていて進みやすい。
ただの虚仮威(こけおど)しだったの?
慌てた白組も、後を追ってラインに進みこむ。
私たちがようやくラインの半分を越えた頃だろうか?