悪魔の運動会
【相原友子】
炎が大口を開けて、私たちを飲み込もうとしていた。
「ま、間宮くん!」
思わず叫んだ声が、裏返る。
それくらい、火を感じていた。じりじりと腕が焼けるような、イヤな汗も止まらない。
「おい!早く行けよ!」
後ろからあおる野々村哲也も、涙目だった。
当然の如く、火は後ろから襲い掛かる。1番に犠牲になるのは、野々村だ。
かといって、ここで脱線すると競技には勝てない。
紅組を見ると、私たちよりほんの少しだけ先に進んでいる。
でもまだ逆転できない差じゃない。
炎に追いつかれなければ、の話だが_。
「間宮くん!」
「分かったから叫ぶな!」
先頭の間宮くんは、1度だけ振り返った。それからは真っ直ぐゴールだけを見据え、私たちをリードしてくれている。
勝つか、焼けるか。
「行くぞ‼︎」
ここにきて歩幅が大きくなる。
ペースが上がった。
炎を引き離し、先にゴールする決断をしたんだ。
私たちはそれを信じるのみ。
でも。
でも間宮くん__。
「間宮くん‼︎」
私の叫びは悲鳴に近かった。
なぜなら炎がもう覆い被さってくるところだったから。
間宮くんが振り返った。