悪魔の運動会
良かった。
周平を失わずに済んだ。
投票もしなくていい。理想の勝ち方だ。
全員がなんとか立ち上がり、ホッとお互いの顔を見合わせる中、放心したように座り込んでいる笠井周平。
それもそうだろう。
炎の熱さと脅威を、1番に感じていたことだろう。
あの時、周平の声がなければ俺は諦めていた。
勝てたのは、後ろを守ってくれた周平のお陰。
「ありがとう」
そう言って、まだ立てない様子の周平に手を差し伸べた。
しばらく焦点が合ってなかった目が、ようやく俺の手を捉える。
何度か瞬きし、やっと俺の顔を見上げた。
「__安藤か」
「大丈夫か?俺たちの勝ちだ」
「そうか、もう無我夢中で」
我に返った周平は、そう言って軽く笑った。
俺もつられて笑顔になる。
「お前のお陰だ」
「そんなこと__」
「早く立てって」
差し出した手を振ると、周平が俺の手を掴んだ。
改めてがっちりと握り合う。
そのまま引き起こそうと力を入れた。
だが、周平が立ち上がることはなかった。
もう、2度と__。