悪魔の運動会
野々村哲也は、私と間宮くん、そして木崎さんが結託していると思っている。
3人で【野々村哲也】に投票すると。
でも、もしかしたら木崎さんが今まで通り、自分に入れるかもしれない。
そうしたら、票は2票ずつ。
あとは樋口美咲の1票が鍵となる。
美咲はどっちに転ぶか分からない。下手に頼み込むと逆効果だ。
それなら、無記名投票を辞めさせるほうが話が早い。
涼子が野々村に入れれば、美咲の票に左右されることなく野々村哲也が失格となる。
だから__。
それを彼が望んでいるから。
私は彼の支えだから。これまでも、これからも。
「__ごめんなさい、それはできない」
「えっ⁉︎」
「私は自分に投票する。ごめんなさい」
私に謝る涼子の目に、一点の曇りもない。それどころか、私は自分が濁っていると感じた。感じさせられた。
「なに言ってるの⁉︎自分が落ちるかも分からないのよ?」
「それでも私は__」
「そんなのおかしい‼︎」
つい大声で叫んでしまった。前を行く3人が振り返っている。
教室はもうすぐそこだ。
投票が始まる。
涼子に2票が入ると決まっている、投票が__。