悪魔の運動会


【樋口美咲】


「それでは投票を開始して下さい」


タブレットに映し出される、5人の名前。


もう、半分以上も減ってしまった。最初から半分。


ふと【大野信吾】を思い出す。始めに落ちたのは信吾だった。


私が落としたんだ__。


残り時間40秒。


雑念を振り払い、投票に集中する。


ムカデ競争で負けたが、誰の責任でもない。間宮の判断も正しかったし、誰かが躓いたわけでもない。


じゃ、誰に投票する?


こうなると、競技は関係ない。


これからの戦いを考慮しなくちゃならない。


間宮はダメだ。居なくなれば勝てっこない。相原友子もまとめる力があるし、私も落ちたくない。無記名投票なんてバカなことはしない。


それなら__二択だ。


野々村哲也か、木崎涼子か。


野々村哲也は確かに輪を乱す。それでも、戸田裕貴よりずっとマシだし、あいつが居なくなって随分と協力的になった。体力的に戦力にもなる。


それならやっぱり__。


私は前に座る、美咲の凜とした背中を見た。なににも惑わされることない、真っ直ぐな姿勢。


きっと涼子は自分に投票する。


あと10秒。


私は指先を動かした。


さようなら。


そう声を掛けて__。






< 256 / 453 >

この作品をシェア

pagetop