悪魔の運動会
【樋口美咲】
「それでは投票を開始して下さい」
タブレットに映し出される、5人の名前。
もう、半分以上も減ってしまった。最初から半分。
ふと【大野信吾】を思い出す。始めに落ちたのは信吾だった。
私が落としたんだ__。
残り時間40秒。
雑念を振り払い、投票に集中する。
ムカデ競争で負けたが、誰の責任でもない。間宮の判断も正しかったし、誰かが躓いたわけでもない。
じゃ、誰に投票する?
こうなると、競技は関係ない。
これからの戦いを考慮しなくちゃならない。
間宮はダメだ。居なくなれば勝てっこない。相原友子もまとめる力があるし、私も落ちたくない。無記名投票なんてバカなことはしない。
それなら__二択だ。
野々村哲也か、木崎涼子か。
野々村哲也は確かに輪を乱す。それでも、戸田裕貴よりずっとマシだし、あいつが居なくなって随分と協力的になった。体力的に戦力にもなる。
それならやっぱり__。
私は前に座る、美咲の凜とした背中を見た。なににも惑わされることない、真っ直ぐな姿勢。
きっと涼子は自分に投票する。
あと10秒。
私は指先を動かした。
さようなら。
そう声を掛けて__。