悪魔の運動会


【間宮旬】


作戦通りだ。


「相原友子」と名前を呼ばれた時、斜め前の本人は肩がピクンと震えた。


細い指先が今も激しく震えている。


まさか自分に票が入るなんて思いもしなかったんだろう。


だが__残りはあと5人。


たとえ致命的なミスで負けたとしても、終わった競技より、次の競技を踏まえて投票しないと本末転倒だ。


次、誰を残して挑むのか?


ミスだけを追求して、次も負けてしまえば結局、元も子もない。


「相原を落とす」


俺はそう持ちかけた。


野々村哲也を落とす流れに傾いていたが、男手を失うのは圧倒的に不利。となると、女子の中で誰を?


樋口美咲の意外な脚力は、これからの競技に欠かせない。恐らく、走る系統の競技が後半にくるからだ。


木崎涼子は、玉入れのカゴ持ちに耐えるガッツがある。それは、俺が同じカゴを背負い、重たい玉を投げつけられた経験から分かる。俺が倒れたくらいなんだ。


そうなると、体格的に最も小柄な相原友子に落ちてもらうしかない。


それがセオリーだ。


「だから相原に入れてくれ」


俺は野々村哲也に耳打ちした。


その哲也の票が先ほど読み上げられたんだ。


「野々村哲也、1票」


これは、相原の票だ。


すべては、俺の指示通りに__。






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