悪魔の運動会
【安藤直人】
「ラジオ体操第1‼︎」
そんな機械的な男性の声とともに現れたのは___兎?
いや、犬やタヌキ、熊もいる。
こちらに手を振り振り校舎の前に整列する、動物たちの着ぐるみ。全くこの場にそぐわない可愛らしさに、女子たちが黄色い歓声を上げる。
中には、手を振って答える女子もいる。
すると、お馴染みのメロディーが流れてきた。
「腕を前から上に上げて、大きく背伸びの運動から‼︎はい、1、2、3、4‼︎」
声に合わせて、動物たちが手を上げる。
腕を上に横にとキレのある動きは、あまりにギャップがあって、思わず男子からも笑い声が漏れた。
「手足の運動‼︎」
几帳面に膝を曲げ伸ばしする動物たちは、一糸乱れぬ体操を披露していく。
笑いながらそれを真似るクラスメイト。だが大半は手持ち無沙汰に成り行きを見守るだけ。
学級委員の俺もそうだった。
いきなり拉致され、見知らぬ山奥の学校に連れて来られたと思ったら【運動会特別プロジェクト】だって?
一体、今から何が始まるというのか?
いやもう始まってるのか__?
腕を大きく回す着ぐるみを見ていたは俺は、一つ大きく息を吸った。
「みんな‼︎準備運動だ、やろう‼︎」
何が始まるにしろ、緊張で凝り固まった体を解(ほぐ)したほうがいい。たとえこの先、何が待っているとしても。
俺は、腕を振って大きく体を捻(ねじ)った。