悪魔の運動会


【相原友子】


名前が呼ばれた時、喉に痛みが走った。


呼吸を忘れたようで、息ができない__息が‼︎


細かく震える指先を隠すように、拳を作る。それでも震えは止まらない。


落ち着いて、落ち着くのよ。


必死で言い聞かせる。


まだ1票、読み上げられただけ。次に野々村哲也が呼ばれた。大丈夫、きっと野々村哲也が票を重ねるはず。


それでも__。


誰かが私に投票した。


私を落としてやろうと、私が失格になればいいと思って投票した者が、後ろの4人の中にいる。


そう考えると、背中が薄ら寒かった。


人に憎まれることなんてない、憎むこともない学校生活。


クラスのため、安藤くんのために、私は一生懸命だった。


それなのに、私に入れる?


「__まさか?」


小声で呟いた。


ストレートに向けられた悪意、それってまさか、木崎さんじゃ?


彼女が、安藤くんの側にいる私を落とそうと?


自分に入れると言ったのに?


私はそれをまんまと鵜呑みにした?


「無記名投票、木崎涼子」


えっ?


やっぱり木崎さんは、自分に入れた?


じゃ、誰が?


もう、なにがなんだか、考えるだけで疑心暗鬼になってしまう。


私と野々村哲也と木崎さんが1票ずつで横並び。


残る票はあと2つ。



< 260 / 453 >

この作品をシェア

pagetop