悪魔の運動会


一瞬、怯んでしまった。


それほど、薫の鬼気迫る馬力が凄まじかったからだ。


それは俺だけじゃなく、女子だけで作られた馬も同じこと。


まともにぶつかったら、吹き飛ばされてしまう。


そしてそれが、直人の狙いだったんだ__。


「えっ__?」


まだ一歩も動いていない俺たちは、勢いよく向かってきた薫が、踵を返して遠ざかっていくのを、唖然としながら眺めていた。


完全に距離を取られる。


まともにやり合うつもりは、はなから無いんだ。


俺が騎手だと分かった瞬間、直人は距離を取ることを選んだ。


それは、長期決戦。


騎手は弱いが馬の体力はある直人たち。一方、俺たちは体力に不安がある。そして短期で決着をつけるつもりだった。


真逆だ。


それにいち早く気づいた、直人が対策を取った。


その証拠に、俺たちが追いかけると、一定の距離を保ったまま逃げていく。


「無駄に追いかけるのはやめよう」


そうは言うものの、俺を抱えている時点で体力は削られていく。


さすが俺のライバルだな。


でも直人、このままお前の策にははまらない。


この勝負、俺が絶対に勝つ。


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