悪魔の運動会
【木崎涼子】
「いいか、玉入れを思い出せ」
間宮くんが、振り返って私に言った。
コツは「玉入れ」にあると。もっと正確にいうなら、玉入れの時のカゴ持ちだ。
四方八方からカゴにぶつけられる玉。重くなっていくカゴ。重い玉が当たっても、腰に力を入れて踏ん張った。
あの感覚を思い出せという。
「残り3分だ。向こうも勝負を仕掛けてくる。でも立花とまともにやり合っても負けるだけだ。それなら」
猛烈な勢いで突っ込んでくる薫とぶつかる瞬間、間宮くんは私の肩に跨いだ。
3人で1頭の馬。
そのうち2人を捨て駒にし注意を引きつけて、大将を肩車した私は、紅組の騎馬にするりと近づいた。
カゴ持ちの要領で。
大将のリカの首を執るために__。
「罠よ‼︎」
いち早くそれに気づいた薫が、馬を引いてかわそうとしたが、馬は三位一体。
後ろ足の反応が遅れた。
間宮くんが伸ばした手は、なす術なく座っているだけの寺脇リカの帽子を掴み取る。
「白組の勝利」
呆気ない幕切れだった。
そして私は確信する。
気の毒だが、リカが落ちるだろう。
誰の目にも明らかだった。
明らかだったのに__。