悪魔の運動会


【安藤直人】


「それでは投票を開始します」


幾度となく開かれてきた投票画面。


もう見慣れてしまった。


だが俺は、これまで投票していない。一度も。涼子と同じように、自分にしか投票をしていない。


それがせめてもの、俺の償い。


失われていくクラスメイトを救えない、唯一の抵抗。


残っているのは4人。


この中から1人が落ちる__。


寺脇リカだろう。


そうはっきりと聞いた。


「私たちは寺脇リカに入れるわ。誰のせいとかじゃない。全く戦力にならないからよ」


立花薫がそう言った。


だから、と続ける。


「だからリカに投票して。もしこれまでみたいに無記名投票をするなら、同点になる。リカはそう予想して、安藤に入れるはず。同点になればどうなるかは分からない。ひょっとしたら2人揃って失格になるかもしれない」


2人一緒に失格。


確かにこれまでの投票では、同数はなかった。どうなるのか全く検討がつかない。


「でも安藤、それって、私たちを見捨てることと同じなのよ?」


「__見捨てる?」


「そうよ。あんたが居ないと勝てない。それが分かってて、みすみすあんたは負けるの?誰にも投票しない姿勢はご立派だけど、それは私と伊藤明日香を裏切るだけよ。それを忘れないで」


薫の言葉が蘇る。


俺は、俺はどうしたらいい?


涼子、どうしたらいい?










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