悪魔の運動会
「それでは深呼吸です。ふかーく息を吸いましょう」
全員がゆっくり腕を上げ、大きく息を吸い込む。心地良い秋風が胸に漂うと、緊張による疲れが和らいでいく。
「はい吐きまーす。それではもう一度、息を吸って」
なにも心配することはない。
可愛らしい着ぐるみと、ラジオ体操。そして運動会。
「吐きまーす」
始まりは異様だったが、それほど悲観する必要もないのかも。
メロディーが緩やかに、終わりを迎える。
最後の息を吐き出し、ゆっくり腕を下ろすと、誰からともなく拍手が起こった。
動物たちも手を叩いて喜んでいる。
大団円を迎えたように、ラジオ体操は終わった。
やっぱり大丈夫だ。
誰もがそう思った。
お互い目を合わせ笑い合い、朝の出来事はなかったことになっている。これから【運動会特別プロジェクト】とやらを行い、帰ればいい。担任の新垣のことは、ちょっとしたスパイス。サプライズ的なものだ。
それなら楽しんで帰ろうか?
少しかったるいけど、SNSネタにはなるに違いない。
一同を安堵感が包み込む。
でもそれは、次の校内放送で泡のように消え去った。
泡のように__。