悪魔の運動会


「それでは深呼吸です。ふかーく息を吸いましょう」


全員がゆっくり腕を上げ、大きく息を吸い込む。心地良い秋風が胸に漂うと、緊張による疲れが和らいでいく。


「はい吐きまーす。それではもう一度、息を吸って」


なにも心配することはない。


可愛らしい着ぐるみと、ラジオ体操。そして運動会。


「吐きまーす」


始まりは異様だったが、それほど悲観する必要もないのかも。


メロディーが緩やかに、終わりを迎える。


最後の息を吐き出し、ゆっくり腕を下ろすと、誰からともなく拍手が起こった。


動物たちも手を叩いて喜んでいる。


大団円を迎えたように、ラジオ体操は終わった。


やっぱり大丈夫だ。


誰もがそう思った。


お互い目を合わせ笑い合い、朝の出来事はなかったことになっている。これから【運動会特別プロジェクト】とやらを行い、帰ればいい。担任の新垣のことは、ちょっとしたスパイス。サプライズ的なものだ。


それなら楽しんで帰ろうか?


少しかったるいけど、SNSネタにはなるに違いない。


一同を安堵感が包み込む。


でもそれは、次の校内放送で泡のように消え去った。


泡のように__。





< 28 / 453 >

この作品をシェア

pagetop