悪魔の運動会
【立花薫】
寺脇リカが笑っている。
それもそうだろう。
同点に持ち込んだリカを、決選投票が味方した。
相手チームが投票する。それは即ち、これから先の競技を踏まえ、より手強いほうを落とす絶好のチャンスだからだ。
私が白組なら、間違いなく安藤を落とす。
それが戦いだからだ。
そして安藤も、それを受け入れる。
無記名投票をしているのは、それとは別の次元の話。
寺脇リカが笑っている。
初めこそ笑い声を噛み殺していたが、勝利を確信したのか、もう抑えることすらしていない。
紅組の教室には、絶望にも似た笑い声が響き渡っていた__。
もし安藤が落ちるなら、この戦い自体、敗戦だと思ったほうがいいかもしれない。
早い段階で、寺脇リカという疫病神を追放しなかった私たちの落ち度だろう。
「それでは開票いたします」
そんな声が聞こえないくらい、リカの笑い声は果てなく広がっていく。
もう、自分では抑えきれないほどに。
激しく机を叩き、床を踏み鳴らして、今や座っていることもできないほどだ。
腹を抱えて体を折り曲げ、涙を流している。
一点を見据えて微動だにしない安藤は、名前を呼ばれるのをジッと待っているようで、そんな敗者を指差して嘲笑っていた。
しかし__。