悪魔の運動会
【安藤直人】
せっかく決死のフライングで得たリードも、半分走った頃にはもう、逆転されてしまった。
だがもう一箇所、差を埋めるポイントがある。
少し先を行く旬にも見えているはず。
あの赤いラインが。
綱引きでは踏むと電気が流れた。ムカデ競争では踏むと炎が追いかけてきた。
何が起こるか分からない。
何も起こらないかもしれない。
できることなら極力、踏みたくはない赤くて太い線。
旬は__もちろん立ち止まることなく、でも飛び越えるために跳び上がった。
やっぱり‼︎
俺の勘は当たった。
旬なら楽に飛び越えられるから、そうするだろうも思った。
でも、このまま走ったほうが速い‼︎
俺は一か八かで、ラインに足を踏み入れた__。
な、何も起きない‼︎
着地した旬との距離が、なくなった。
あとは走るだけ。
小手先の賭けも、小細工が通用する相手でもない。
全力で駆け抜けるしかない。
足の速さでは敵わない。
残りは50メートル。
差がまた少しずつ開いていく。
このまま引き離されるのか?
俺が旬に優っているのは、何だ?
何かあるはずだ。
何か__。