悪魔の運動会
【間宮旬】
俺は思い出していた。
直人との出会いの時を。
あれは小学生5年のこと。父親の都合で転校ばかりを繰り返していた俺は、いつしかクラスメイトとは距離を取るようになっていた。
どれだけ親しくなっても、確実に別れはやってくる。
それなら、ある程度の付き合いに留めてけばそれほど別れは辛くない。
どこか冷めた目で、安藤直人を見ていた節がある。
分け隔てなく声を掛け、クラスを1つにまとめ上げる学級委員が、俺のことを気に留めないはずはない。
事あるごとに誘ってくるが、理由をつけて跳ね除けた。
「人の気も知らないで、気安く話しかけるな」
面と向かって吐き捨てたこともある。
そして運動会がやってきた。
クラス対抗リレーの選手を決める。もちろん、俺は出ない。誰より足が速いのは分かっていたが、なにも分かち合いたくはない。
喜びも、別れの悲しみも与えたくはなかったからだ。
「間宮くんがいいと思います」
「断る」
「じゃ、俺と勝負。俺が勝ったらリレーの選手」
「断る」
「負けるの怖いんだ?」
「はぁー?」
うまく乗せられたと気づいた時にはもう、クラス中の注目を集めたまま、俺はスタートラインに立っていた。
まぁいい。
コテンパンに負かしてやる。