悪魔の運動会
【間宮旬】
数年前の直人との一騎打ち。
軽く追い越してやった。
足は断然、俺の方が速い。
初めからリードして負かすより、ちょっとくらい期待させてやったほうがいいだろ?
悔しげな横顔に別れを告げ、俺は俺でギアを上げた。
もう、こいつがついてこれない最高速に__。
「っ⁉︎」
今度は俺が驚く番だ。
こいつ、ついてきてやがる。
引き離すどころか、食らいついている。
なぜだ?
足の速さでは俺に敵わないのに、どうして⁇
その時、俺の耳に聞こえてきたのは、歓声だった。
「直人ー!いけー!」
負けるな!といったクラスの応援が、安藤直人の背中を後押ししているのか?
ゴールはもうすぐ。
俺も夢中で走った。
手加減なしだ。
後先のことを考えず、こんなに無我夢中になったのはいつ振りだろう?
「間宮くん!頑張って‼︎」
俺を応援する声も聞こえてくる。
もう、リレーがどうこういう話じゃない。
すでに俺は、安藤の策略によって、クラスに迎え入れられようとしている。
仲良くなんて、なりたくないのに‼︎
本当は__仲良くなりたくて仕方ないのに‼︎
でも今は、そんなことどうでもいい。
死ぬ気で地面を蹴って走るだけだ。
俺たちはほぼ同時に、ゴールした。