悪魔の運動会
【安藤直人】
後にも先にも、俺が旬に勝ったのは、あの時の一度だけ。
クラスメイトに取り囲まれた旬は、初めて笑った。
リレーではアンカーをつとめ、クラスを勝利に導いた。
それからしばらくして、両親が離婚をし、母親の元についた旬とは、あれからずっと一緒だ。
良き友達、良き仲間、良き好敵手。
旬が居たからこそ、俺は伸び伸びとクラス委員を務めることができた。
迷った時、いつも側に居てくれるから。
迷った時、いつも背中を押してくれるから。
「安藤‼︎頑張って!」
立花薫だ。
そんなに今まで親しく話したことはない。薫は、どちらかというと、クラスより部活だ。でもその聡明さには驚かされた。ここまでやってこれたのも、薫のお陰かもしれない。
「安藤!しっかりー!」
伊藤明日香。
明日香とも、それほど近くはない。いつも樋口美咲の陰に隠れている印象だったが、大玉転がしでの勇ましい姿は、今でも脳裏に焼き付いている。
2人が俺を応援してくれている。
白組の3人も、決選投票で俺を生かしてくれた。
だから俺は、負けるわけにはいかない。
最後の力を振り絞り、ゴールに飛び込んだ。
先にテープを切ったのは__?