悪魔の運動会
【間宮旬】
もし直人に出会わなければ__。
俺は、寺脇リカのようになっていたかもしれない。
自分の本当の気持ちを押し殺し、周りに歯向かうように生きていただろう。
「間宮くん!もう少しよ‼︎」
相原の声が聞こえる。
なにも、応援に背を押されるのは、直人だけの専売特許じゃない。
俺の足にも力が入る。
相原は本当によく気がつく。気がつきすぎて可哀想なくらいだ。ほんと、直人は恋愛に関しては鈍感すぎるからな。運動会が終わったら、一言くらい言ってやらないとな。
「間宮‼︎負けるな!」
樋口美咲が大声で叫ぶなんてな。
いつも澄まして周りを見下している、なんて言うヤツも居るが、美咲はそうじゃない。ただ自分に正直なだけだ。だから信吾が落ちた時、目に見えて落ち込んでいた。
「間宮くん!」
木崎涼子が俺の名を呼ぶ。
本当は、直人の名を心から呼びたいだろうに。もし俺が勝てば、直人が落ちるというのに。それでも俺を応援してくれる気持ちに、俺は命を懸けて応えなければならない。
この命と引き換えに、走り切る。
たとえ命と同じくらい大切な「友」を失くすことになったとしても__。
俺はゴールテープを切った。
そのまま直人と2人、ゴールに倒れ込む。
どっちだ?
どっちが勝った⁉︎