悪魔の運動会


【安藤直人】


___おかしい。


俺は立ち上がり、バスの車内を見回した。


何かが、おかしい。


けれどそれが【何か】が分からない。


今日は社会見学で職場体験をすることになっている。


例年は辛気臭い菓子工場だが、今年は新しいテーマパークということもあり、車内はいつもより浮き足立っていた。


各々、気心知れたグループと自由に過ごす時間。


前の座席では野球部がトランプをし、女子のグループはそれぞれに笑い合い、後部座席ではヤンキー連中が騒いでいた。


俺はやんわり後ろを睨みつける。


また煙草を吸ってるな?


さっき注意したばかりだ。


このままなら学級委員として見過ごすわけにはいかない。


木枯らしが吹く秋空の下、窓から見える景色は先ほどから山道を走っていた。


次の春で俺たちは卒業する。


そしてバラバラになる。


だからそれまで、少しでも楽しい思い出を作りたい。


そして俺がこのクラスをまとめ、守らなくちゃならない。


この、3年C組を__。


「ガッキーじゃない?」







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