悪魔の運動会
【相原友子】
間宮くんが去っていった。
冷たい風が、校庭を抜けていく。
日が傾きかけ、あれだけ晴れ渡っていた空は今、私たちの心を顕著に表しているようで、曇り始めていた。
借り物競走なら、男手も必要ないだろう。
私たちだけでも戦える。
でも戦ったとしてまた、次は誰かが落ちる。
落ちなくてもいい、誰かが__。
「私が最初に行くわ」
順番を決めなくてはならないが、どこか上の空だった私を見兼ねたのか、樋口美咲が名乗り出た。
彼女なら大丈夫だろう。
木崎さんも居る。
私が間宮くんの代わりに先頭に立つ必要はない。立ったところで、6人から5人になるだけ。そう、もう6人しか残っていない。あんなに沢山いたのに。みんなで半信半疑でラジオ体操をしたというのに__。
私の中で、なにかが折れかかっていた。
「じゃ、私が2番目でいい?」
木崎さんが私に同意を求める。
私になんか訊かなくてもいいのに。
だって、どうせあなたはまた、自分に投票するんでしょ?
それが安藤くんとの交わりなんだから。
私がなにを言ったところで__。
「じゃ、最後に行くわ」
そう言って、私は微笑んだ。
それはこれまでと同じ、みんなのことを第1に考えている相原友子の微笑みだった。