悪魔の運動会
【相原友子】
ひょっとしたら、お題がバレずに正解するかも?
そんなずる賢い考えは、耳障りな不正解音に打ち破られる。
しかも「証明して下さい」と、アナウンスが流れた。
証明しろと。
私が1番、落としたいやつが木崎涼子だという証明?
「早くしてよ‼︎」
後ろから大柄な立花薫と、馬鹿でかいうさぎがせっついてくる。
薫のお題がうさぎなんだ。
恐らく正解だろう。
私が証明する以外、もう勝ち目はない。
「でも、どうやって?」
心の迷いがそのまま声となって出たのか、猿が恭(うやうや)しく差し出したのは__。
ピストル?
思わず受け取った、黒い塊。本物の拳銃ではなく、スタートの号砲を鳴らすものだろう。これで一体なにを?
恐る恐る顔を上げると、猿は人差し指と親指でピストルを作る。そして涼子の顔をめがけて、引き金を引く素振りをした。
こうやればいいのだと。
お前のその握っている、悪意の塊で。
「そんなの、私は__できない」
言葉にしてようやく、のし掛かっていた重りが取れた気がした。
そうだ、やめればいい。
それだけのこと。
球が入っているかもしれない。
それを涼子の顔にさし向けるなんてこと、私にはできない。
いくら、心の奥では違う感情があったとしても。
私には__できない。
改めて、ブザーが鳴った。