悪魔の運動会


【立花薫】


「どいて!」


2人を突き飛ばし、ここにきて嫌がるうさぎを猿の前に突き出す。


どういうことか詳しい成り行きは分からないが、順番が回ってきたことだけは確かだ。


チャンスが巡ってきた‼︎


しかも確実にものにできるチャンスが。


「お題の答えは、うさぎよ」


そう言うと、猿が少し体を引いて、うさぎを睨(ね)めつける。


品定めしているような?


私はお題を開いて、猿の目に貼り付けてやった。


「耳が大きくて、目が大きくて、歯が出ていて、ヒゲが生えている、みんなのアイドル。うさぎじゃないの?誰がなんと言っても、うさぎじゃないの‼︎」


「ブー‼︎」


「はぁ⁉︎どこが不正解なのよ‼︎」


「ブッブッブーーー‼︎‼︎‼︎」


さっきの仕返しとばかりに、何度もひび割れた音を鳴らす。


プイッと顔を背け、聞か猿のポーズ。全く聞く耳をもたない。


「ちょっと待ってよ、うさぎの他になにが__?」


そう問いかけると、聞か猿から言わ猿へ。手を口に当てたかと思うと、今度は見猿だ。目を手で覆うのだが、指を広げてその間から何かを見ている__。


私もその視線を追いかける。


相原友子が、木崎涼子に向かって狙いを定めていた。


それでも私は考える。


うさぎじゃなかったら?


うさぎじゃなかったら?








< 322 / 453 >

この作品をシェア

pagetop