悪魔の運動会
【相原友子】
「相原さん、大丈夫?」
薫に押されて力なく地面に倒れこんだ私は、立ち上がる気力もなかった。
木崎さんが、私に手を差し伸べる。
訳も分からないまま連れてこられ、きっと不穏なことがお題に書かれてあったと気づいていながら、彼女は私を助け起こそうとする。
そう、彼女こそ、なんの見返りも求めていない。
心のどこかでそれが分かっていたから、私はどうしても彼女の前だと卑屈になってしまう。
「お題が何だったのか、きかないの?」と尋ねてしまうくらい、卑屈に。
それなのに木崎さんは「私も直人も、相原さんのことは信頼してるから」と返してくる。
信頼してるから。
そう言いながら、安藤くんは私には見向きもしなかった。
ほんの僅かでも、迷う素振りさえなかった。
彼は真っ先に、あなたを選んだんだから__。
私が絶対に手に入れられない、彼の心。信頼さえ勝ち得ている。私が唯一、あなたに誇れるものだと思っていたのに。
だから私は、あなたの慈悲は受けない。
ゆっくりと立ち上がる。
涼子の手が行き場をなくす。
そして私は、狙いを定めた。
「私は__あなたに消えてほしい。心から、そう思う」
指も声も心も、震えていなかった。
ああ、私はずっとこうしたかったんだ。
ずっと__。