悪魔の運動会
【立花薫】
間一髪だった。
同じ味方同士なのに、相原友子が木崎涼子に銃口を向けている、物々しい雰囲気。
咄嗟に私は悟った。
もし引き金を引けば__私は負ける。それは紅組が負けることを意味しているんだ。
しかも、今にも銃声が鳴り響きそうで。
うさぎを掴んでいた手を離し、私は必死で頭を巡らせた。
もう探しになんて行けない。
今、この場で私のお題を猿に認めさせる、手立ては?
一瞬で大逆転できる、なにか__⁉︎
カチッ。
音は鳴らなかった。
それでも何度も引き金に手をかける相原友子の目から、見る見るうちに涙が溢れていく。
木崎涼子を狙っているはずなのに、まるで、自分の心を何度も打ち砕いているかのように。
音はしなくてもそれは、確実に撃つ側の心を蝕んでいるように見えた。
けれど__。
それよりほんの僅かな差で、私の手が勝利を掴んでいた。
私の手を、猿が見下ろす。
耳と目が大きくて歯とヒゲがあるみんなのアイドル。
「あなたが私の答えよ」
グッと力を込めて、猿の手首を掴む。
うさぎなんかじゃなく、あなたこそが、みんなのアイドルなんだと。
ようやく、私に正解音がもたらされた。
勝利を告げる声とともに__。