悪魔の運動会
*投票第9回目
【樋口美咲】
「それでは投票を始めます」
それはどこか、異様な空気に包まれていた。
残るは3名。
私と、相原友子と木崎涼子。
この中から1名が失格となる。
順当に考えれば、相原だろう。私も木崎涼子も、つつがなく最後に繋げた。大きなミスはしていない。
明らかに相原友子は時間がかかり過ぎていた。
お題が何かは分からなかったが、味方に銃を向けて血迷ったとしか思えない。
その隙に紅組にも逆転された。
と突然、その相原が立ち上がる。
「木崎さん、私はあなたに投票するから」
その宣言はある意味、妥当ともいえる。
これまで木崎涼子は無記名投票、すなわち自分にしか投票していない。
それで自分自身が落ちるかもしれない苦境でも、その凜とした姿勢を崩すことはなかった。
けれどそれは、間宮や相原が彼女を守ったから成り立つ構図であって、今回は本当に致命傷となる。
相原が木崎に入れる。そして涼子本人が自分に入れるのなら、それでもう決まり。私の票すら関係がない。
でももし、涼子が無記名じゃなく、相原に投票したら?
事態は逆転するだろう。
そうなると、私の票も生きてくる。
だからちゃんと考えないと__誰を落とすのかを。