悪魔の運動会
【相原友子】
「私はあなたに投票するから」
それだけで充分だった。
もう、余計な言葉は必要ない。
悪意を通り越して、殺意を差し向けた時点で、言葉なんて無用。
木崎涼子は分かっている。
自分が無記名投票をした時点で、自分が落ちることを。
失格者の末路は分からない。
けれど誰もが気づいている。
もしかしたら解放されるなんてことは、万に1つないだろうと。
殺されているかもしれない。
ただ投票すれば助かるんだ。
私にさえ投票すれば、涼子自身が落ちることはない。
私はもう__どうでもいい。
安藤くんを心から支える優等生の副委員長、相原友子でなくなった時点で、もうどうでもよくなっていた。
剥がれ落ちた仮面を再構築する気力は、もう残ってはいない。
失格でもいい。
でもそれなら、木崎涼子に殺されたいと思う。
これまで頑(かたく)なに誰も陥れなかった涼子に、1票を入れてほしい。
私を殺してほしい。
それなら快く死ねる。
あなたに殺されるなら本望だ。
あなたが投票してくれるのなら。
それが私のたった1つの願いだった。
たった1つの__。