悪魔の運動会


【木崎涼子】


落ちる。


間違いなく、今回の投票で私は失格となる。


無記名投票をするのならば__。


それよりも私の心を蝕(むしば)んでいたのは、相原友子から向けられた、明らかな殺意。


彼女は私を殺そうとした。


もちろん、この尋常でない【運動会】がそうさせているのは分かっている。


分かっているけれど、彼女の中に私に対する、錆びついた思いが潜んでいたのは事実。


実直な彼女を、いつしか歪めさせていたことが、私にとって1番のショックだった。


って、こんな風に思うことが、そうさせているのか。


全部、私が悪い。


彼女が直人を好きなのも、もちろん分かっていた。


彼女の姿勢に甘えていたわけじゃない。


私は、直人が好きだから。


誰よりも__。


投票しなければ、負ける。


投票することを、彼女は望んでいる。私に投票させようと、それだけが与えられた使命だと。


もし私の中に、申し訳ないという気持ちが僅かでもあるのなら、投票すべき?


でも彼女はそれを望んでいない。


謝罪じゃない。


自分が思い余って放った悪意を帳消しにするのは、私がそれ以上の悪意をぶつける。殺意や憎しみ、恐怖によって彼女に投票し、陥れることを望んでいる。


直人、どうしたらいい?


私はどうしたら?



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