悪魔の運動会


第1競技の失格者だった、大野信吾。


あんな大きな体を見逃すはずがない。


それなのに、どうしてか姿が見当たらない。そして、全員が俯いている。


「何があった⁉︎なんで信吾が居ない__ん、だ?」


言葉尻が不自然なのは、寺脇リカが指をさしたからだ。


薄暗がりに浮かび上がる、大きな足。


俺は引き寄せられるように、床に倒れている大きな体に近づいた。


間違いない。


ジャージやら靴やら、信吾が履いていたものだ。


だったらなぜ、上半身に布切れが被せられている?


顔を覆うように__?


そっと布をめくった俺は、息ができなかった。


信吾であったはずのその顔は、原型をとどめていないくらい、陥没していた。なにかで激しく殴られた跡。


「だ、だれが一体__?」


分かりきった問いかけにも、誰もが怯えたように答えない。


どれくらいそうしていただろう?


信吾の遺体の傍らで、俺は呆けたように膝をついていた。


けれど、人数は多い。


力を合わせれば、ここから逃げ出すことだって可能なはず。


いつまでもこんな所に居ても仕方がない。一刻でも早く逃げなければ、ろくなことに__。


「それでは敗者復活戦を行います」






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