悪魔の運動会
【寺脇リカ】
なるべく目立たないよう、気をつけていた。
いつもの通りにしていればいい。
いつもの、存在していない寺脇リカとして__。
「それでは始めます。よーい、ドン‼︎」
スタートの合図が鳴ったというのに、誰もが動かなかった。
1番に向こう側に着けば復活できる。それなら1秒でも早く飛び込んで、リードを奪いたいところだが。
「なんか、やばくない?」
世古佳恵が、隣の植松理沙に言っているのが聞こえてきた。
プールに張られている水の色は、なんの変哲も無い水色で透明感すらある。
それなのに誰も泳ごうとしないのは「何か」があると感じているからだ。
全員の危険信号が灯っているため、迂闊に近寄れずに、ただ時間だけが過ぎていく。
嫌な予感がした。
こういう時の勘は当たる。
今よりも更に目立たない位置に忍び足で移動する。
大丈夫だ。世古と植松との距離は取っている。あの2人に逆恨みされるのは分かっていた。だから極力2人からは離れたところに__?
誰かとぶつかった。
「どこ行くのよ?」
___清水奈々だ。
あの2人と一緒のように、私をイジメていた奈々。逃げ場を失った私を3人が取り囲み、プール際まで引きずってるいく。
「やめなさいよ‼︎」
相原友子が止める声も虚しく、私は思いっきり突き飛ばされ__。