悪魔の運動会
それは静かだが、地獄のような怒りを含んでいる。
「いや、それはちょっと__」
泣きべそを浮かべた、情けない顔をしている俺を一瞥する裕貴。
額から流れた血が乾き、顔の半分は腫れて膨れ上がっていた。それでも眼光の鋭さは以前の、いや前にもまして尖っている。
「お前、俺に投票したの忘れたのか?」
「あ、あれは仕方なく__」
「あいつら突き落としたら許してやる」
ということは、突き落とさないと許されないわけで、許されないと俺が突き落とされて魚の餌になってしまう。
どうせ、勝ち残るのは1人だけ__。
裕貴の圧に耐えられなくなった俺は、咆哮を上げながら、手当たり次第にクラスメイトをプールに突き飛ばしていった。
世古佳恵と植松理沙、清水奈々の3人を手っ取り早く蹴り倒す。
「お前、何やってんだよ⁉︎」
そう言って間宮は、助けに行こうとしたが、悲鳴を上げて落ちていく肉の塊を、ピラニアたちが貪り食っていく。
助けを求める声が、瞬く間に血となって広がっていった。
「__ひどい」
顔色をなくす相原友子に手を伸ばしたが、間に間宮が割って入ってくる。
さすがに手出しはできない。
だが、半分は消え失せた。これで裕貴も許してくれるだろう。
「さんきゅー」
こういう時の裕貴は機嫌がいい。機嫌良くさせておいて、どこかで出し抜かなくては。出し抜いて__始末しないと。
にっこり笑った裕貴が、俺に言った。