悪魔の運動会
【相原友子】
「俺がなんとかするその間に相原、お前が行け‼︎」
そう言い残すと、間宮くんは勢いよくプールに飛び込んだ。
ドミノ倒しのように、次から次へとプールに落ちたクラスメイトの肉片をかき分け、私は泳いだ。
時折、足に針が突き刺さったような痛みが襲うが、懸命に手足をバタつかせて振り切る。
前を先導してくれる間宮くんのお陰で、半分ほど進んだろうか?
戸田裕貴がいた。
なぜか立ち止まっている。
ゴールはもう、すぐ目の前だというのに__?
「間宮くん⁉︎」
同じく立ち止まった背中に声を掛けたが、腕で制された。
雨が、少し降り出した。
プールの水面が、雨粒によって波紋を広げていくのを私たちは、息を飲んで見ているだけ。
前に進むことも、戻ることもできない。
太陽は分厚い雲に覆われ、薄暗がりとなったプールには、さらに黒光りする「もの」が優雅に闊歩しているのが見える。
__サメだ。
プール後半には、何匹もの禍々しい尾ひれが互いを避けるように円を描いていた。
「間宮くん__」
身動きが取れなくなった私たちの目の前で、裕貴が水面を蹴って進み出した‼︎
ちょうどその横っ腹を、大きく開け放たれたサメの口が襲いかかる。
た、喰べられる⁉︎