悪魔の運動会


【戸田裕貴】


俺と哲也はいつも一緒につるんでいた。


ホントな気の小さいアイツは、なんでも俺の言うことをきいた。


万引き、恐喝、傷害。


俺という後ろ盾があったからこそ、あいつは周りからも一目置かれる存在になった。それは全部、俺のお陰。俺があいつを、そこまでに仕立て上げたからだ。


俺はやられたらやり返す。


それも倍じゃ、すまさない。


けど恩義も忘れない、義理堅い人間だ。


そのことを哲也にも叩き込んでおいた。


俺に投票した罰は償わせた。次は、借りた恩を返す時じゃないか?


プールに飛び込んだ俺は、まだ死にかけの哲也を引き連れて半分まで進んだ。


この肉片を、盾にするため。


案の定、後半には鮫がうようよと縄張りで得意顔だ。


俺を喰べ尽くそうと大口を開けたその中に、哲也を突っ込んでやる。


いとも簡単に手がもげたのには驚いたが、脇を抜けていこうとする小林健に、縋るようにその手を差し出した。


バカなこいつは、俺の手だと勘違いして掴む。


「悪いな」


にんまり笑った俺は、腕の塊を掴んで呆けている健を横目に、ラストスパートをかけた。


その腕もろとも、鮫の餌となった健の絶叫を僅かに聞きながら__。


俺様が1番だ。


プールのへりに手を掛け、体を押し上げる。


腰に、腕が巻きついた。






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