悪魔の運動会
【寺脇リカ】
私は存在しない。
存在しない存在しない存在しない。
そこに居るのに、そこに居ない振りをするのは得意中の得意だ。そうやって、私をゴミのように扱うイジメにも耐えてきた。寺脇リカはこの世に居ない__。
プールに突き飛ばされ、魚の餌食になる前に、私は深く潜水した。
こう見えても、水泳教室に通っていた。
ただ、泳ぐのではなくて、水の底に潜って私だけの世界を堪能する。そこには、私を虐げる悪意は存在しないから。
私を突き落としたアイツらが、肉と化した血に染まった水の中を、私は唱えながらゆっくり進む。
存在しない存在しない存在しない。
息をするために、ゆっくりと水面に顔を出す。
残っているのは、取っ組み合いをしている間宮と戸田
。
そして__相原友子だ。
この中で生き残るのは、たったの1人。
私は全くのノーマークだ。
少しずつ、でも確実にゴールに近づく。
勝つのは私だ。
また本戦に勝ち上がって、私を落としたあいつらを地獄に叩き落としてやる。
その為にはまず、プールから上がろうとしている相原友子を仕留めなくては__。
「どこ行くの?相原さん」
私はそう言って、手にしていたカッターをそのお腹に突き立ててやった。
初めてだ。
自分以外のものを切り刻むのは。