悪魔の運動会
【相原友子】
知らなかったといえば、ウソになる。
寺脇リカがイジメに遭っていた。
うちのクラスに根深いイジメが存在していることを、私は深刻に捉えていなかったんだ。
安藤くんとも相談した。
クラス会も開いた。
担任の新垣はただ熱く語るだけで、根本の問題は解決されない。
見た目には和らいだかと思い、私はそれを信じた。信じることが都合が良かったからだ。それでも私はリカをしつこいくらい気遣った。当のリカは心を閉ざしていたが__。
この運動会によって、日頃の鬱憤を晴らそうというリカの気持ちは分かる。
だからリカが非協力的だろうが、誰かを陥れようが、多かれ少なかれ私たちの誰もがそうだ。
__お腹が熱い。
なにかで刺されたみたい。
お腹は熱いのに、急速に身体がは冷えていく。外枠から順に、やがてそれは心まで凍らせてしまうだろう。
立っていられなくなり、水の中に沈んでいく。
不敵に微笑むリカが、プールのヘリに手を掛けた。
「__ダメ」
薄れゆく意識の中で、私は懸命にリカに叫ぶ。
命を奪われてなお、私はリカに叫んでいた。
「上がっちゃ__ダ、メ」
実際は吐息にもならなかったが__。
それでも私は命が尽きる前に、別の命が一瞬で尽きたのを見届けた。