悪魔の運動会
【間宮旬】
戸田裕貴が浮いている。
ようやく決着がついた。
あとは相原が__ゴール前にたどり着いている。プールから上がるだけでいい。相原になら任せられる。
「させるかよ」
不気味な声が聞こえたかと思った瞬間、俺はもう水の中に沈められていた。
やられた振りをしていたのか⁉︎
足で腰をがっちりホールドされ、羽交い締めにされる体勢で、体の自由がきかない。水を吸い込まないよう我慢するも、首まで締め付けられて意識が朦朧としていく。
それでもいい。
相原が今のうちに勝ち上がるなら。
でも__ひょっとしたら心配で戻ってくるかもしれない。
俺は最後の力を振り絞って、首にかけられた腕を引っ張り上げる。
くそッ‼︎
爪を立てると、ほんの僅かに腕が動いた‼︎
その瞬間、止めていた息を吐き出し、俺は大口を開けた。水が逆流するように肺に流れ込んでくる。
気を抜くと気絶しそうなほどの痛みに耐え、裕貴の腕に噛み付いた。
後ろで、大きな泡が立ち昇っていく。
痛みに悲鳴を上げたんだ。
俺と同じように、肺が破裂するくらいの激痛だろう。
腕の束縛が解け、水面に跳び上がる。
空気を求めて喘ぐ俺の目に__相原が流されていったこと、リカがワニに頭を喰われて水の中に引き入れられたこと__が飛び込んできた。
「相原‼︎」
「他人の心配してんじゃねーよ‼︎」